売却を考えた際、一般媒介契約と専任媒介契約のどちらが高く売れるのかということは誰でも一度は悩むポイントです。
一般媒介と専任媒介に適した物件とはどのようなものがあるでしょうか。
■一般媒介の方が高く売れる場合
一般媒介は、複数の不動産会社へ依頼できるということが最大の長所です。
複数の不動産会社による競争原理が働くことを期待できますが、その反面、他社で契約されてしまうリスクから宣伝費をかけず、売却に時間がかかってしまうというケースもあります。
そのため一般媒介では早期売却をするために売却価格を下げていく傾向もあります。
では、一般媒介で高く売れる物件とはどういうものでしょうか。
ズバリ人気の高いエリア、人気の高い物件などすぐに買い手がつくことが予想されるマンションの場合です。
人気度や希少性などから特に需要が高い物件の場合、労力をつぎ込まなくても自然と高く売れます。
こういう物件は不動産会社にとってはどうしても媒介契約を獲得したいものです。
複数の不動産会社の媒介契約争奪戦の結果、打ち合わせの時点で売却価格の釣り上げを狙うことです。
あまり知られていないのですが、一般媒介でそれぞれの不動産会社に依頼する売却価格は必ずしも同額ではなくても構いません。
一番高値を付けた不動産会社は確実に媒介契約を獲得できるのですから、必然的に媒介契約の打ち合わせの段階で価格が釣り上がって行きます。
競争原理を販売活動の前の段階である媒介契約を締結する時点で、有効に引き出すということです。
こうして市場に物件情報が出る時点では、各社ともに釣り上がった価格で並ぶようになります。
人気物件ですからのんびりしていたら他社に契約されてしまうので、高値で媒介を受けるだけ受けておいて物件情報を登録せずに一定期間経過後に値下げを提案(「干す」+「値こなし」)という行為をする隙もありません。
一般媒介の方が高く売れるケースの一例です。
専任媒介の場合は、前述のような「売れる物件」と反対の物件、言いかえれば「売れない物件」を高く売りたい場合に向いています。
一般媒介とは異なり不動産会社は費用倒れになるリスクが低いのですから、広告など販促活動を積極的に行えます。
希望の売却価格で買い手がつくまでじっくりと待つことも可能です。
一例として、特殊な事情を持つ「グレー物件」では、状態にもよりますが、高く売るためには専任媒介が最適だと考えられます。
心理的瑕疵(かし)など告知事項にあたるかどうか微妙な特殊事情を持っている物件——便宜上「グレー物件」と記述します。
事故物件やいわくなどの定義については割愛しますが、不動産売買の際の告知義務の有無については、年数の経過や程度によって不動産会社ごとに判断が分かれるということは意外に知られていません。
クロ(告知義務あり)と判断した会社に依頼すれば、その分だけ減額された価格でしか売却できません。
当然、契約後の買主とのトラブルを未然に回避できますが、本来は裁判で確定されるべき事柄であるに関わらず、裁判を経ずにグレーではなくクロと確定させてしまうことになります。
しかし、シロ(告知義務なし)と判断した会社に依頼すれば、減額なしの通常の取引価格で売却することが可能です。
もちろん、告知義務違反は不法行為ですので、それに該当しないという根拠の説明をしっかりと受けた上で判断することが重要です。
このような物件の場合には、一般媒介で複数の不動産会社に依頼することにより、売却価格の低下のみならず、いわくを拡散して定着させてしまうという弊害も生じる恐れがあります。